第5講座では、肥料や土壌改良材といった土壌資材の分類や、肥料と土壌改良材の違いなどをお話ししました。
そこでこの講座では、土壌資材を使うための基本知識のお話をします。
まず最初に、土壌資材を使う目的は「良い土づくりをする」「育てている植物が必要とする物質を供給する」のどちらか、または両方です。土壌資材の中でも肥料を与えるということは、「植物が必要とする物質を供給する」、つまり、育てている植物が育つための「食事」を与えるようなことです。
ここで、人間でも体質や体格、成長の段階やその時々の体調によって必要な食事は違います。植物も同じで、成長の段階やその時々の状態によって、食事の与え方=施肥の仕方が変わってきます。特に植物が土に根を張り、土の中の根から養分を吸収する場合は、土の種類や状態というのは胃腸の状態のようなもので、土の種類や状態によって与えるとよい・悪い食事やその与え方が変わってきます。
例えば、土壌中の養分が植物にとって吸収しやすいかどうかはpHによって変わってきます(下図)。第3講座で土壌のpHは人間にとっての体温に例えられていると説明しましたが、体温が「ちょうどいい範囲」にないと、食事をしても上手く消化吸収できないように、土壌のpHが「ちょうどいい範囲」にないとせっかく、肥料を与えてもうまく吸収することができません。
また、土壌の種類によってどの程度、養分を保持できるか、どの程度、養分が溜まっても大丈夫かも違ってきます。人間でも、年齢や体質によって代謝が違い、代謝が良い人は、少々、高カロリー、高栄養の食事をしても健康を維持できる一方、歳を取って代謝が落ちてカロリーや塩分が高い食事をすると健康を損なうのと似ています。
下の図は、そうした「体質=土壌の性質の違い」によって、施肥量を変化させる必要があること、その変化のさせ方を示した図です。
実際の施肥については、さらに、農地の履歴や作物の状態による施肥の調整が必要であり、第3講座で書いた通り、「土づくりの専門家」による指導を受けながら、調整の仕方を覚えていくことが好ましいと考えます。
ただし、「土づくりの専門家」に丸投げするのではなく、日ごろから農地で作業し、作物を観察している栽培者自身が本講座でご説明している「植物を育てること」「土のこと」「肥料のこと」「肥料のやり方の基礎」を理解しておくと、「土づくりの専門家」の専門能力がより効果的に発揮されると思います。